『脳の老化と病気』小川紀雄(講談社ブルーバックス99/2)を読む

サブタイトルは<正常な老化からアルツハイマー病まで>
 もう老化もかなりの段階に達して,いまさらこういうものを読んでも手遅れ感があるのだが、このサブタイトルにもある<正常な老化かアルツハイマー病か>については矢張り関心を持たざるを得ない。

 著者に依れば、この本は単に脳の老化をもととした疾患の解説をしただけではなく、記憶・学習,運動機能などの脳の働きの基礎知識,脳の老化,老年期を迎えるための心構えについてもページを割いたと云う。
第一章 脳の老化
第二章 記憶と痴呆
第三章 運動機能障害とパーキンソン病
第四章 老化の科学
第五章 脳の健康 

●老年期の痴呆性疾患で最も重要なものは、アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆で全体の90%を占めている。 
 アルツハイマー型痴呆も発症後3年ほどは、昔の記憶は比較的保持されるが、意欲減退・自発性低下が見られる。時に怒りっぽく不安焦燥感や妄想あり。
 日本では,このアルツハイマー型痴呆よりも、脳血管性痴呆が多い。
初期症状としては、不眠,抑うつ気分,体調不調といった不定愁訴,また喜怒哀楽が激しい感情失禁が出る。状況はまだら痴呆とよばれるような態をなす場合もある。普通は自分が病気だと云う自覚もあり、人格も比較的保たれている。

●生理的老化にともなう良性健忘と痴呆の相違。
前者の物忘れ症状=体験の一部を忘れ、そのことを自覚している。
後者の物忘れ症状=最近の体験を覚えられなく、そのことの自覚がない。 

●痴呆と鬱病の区別は、特に不眠や食欲不振の自律神経症状に見られ,痴呆の場合は症状がなく,鬱病では必ず発症するという特徴があるとのこと。それらの症状についても、痴呆の場合は軽く云ったり否認するが、鬱病の場合は記憶や知的能力の低下を強く訴えるという。

予防の結論で云えば,軽い運動で身体を鍛え,手を使う作業で脳のトレーニング/ブラス思考で心と身体の若さを保つ,ということになるらしい。

 すでに10年余り前に出版された本で、その後の研究で変わっていることもあるやも知れぬが,ともあれ自己診断のABCとして興味が持てるものだった。